2021年の振り返り

退職と個人事務所開業

 2021年3月、30年間勤めた昭和大学附属烏山病院を退職し、ソーシャルワークと成年後見人等の受任を中心とする個人事務所の開所を決意しました。まずは、事業内容と共に、事務所をどうするか決めねばなりませんでした。面接等での使用が多いのか、事務所所在地や郵便物の受取先として考えるのか、資料の保管場所なのかなど、仕事の内容により、事務所の利用方法が変わります。成年後見人等の受任、ホームソーシャルワーク、ファミリーソーシャルワーク、スーパービジョン、アドバイザー・コンサルテーション、研修・事例検討講師等、多様な活動を想定した分、どの程度のニーズがあるのか、始めてみないとわからない状況でした。月々の事務所家賃も負担感があり、事務所を借りる方法と、自宅を事務所にする方法で悩んでいたところ、バーチャルオフィスを見つけました。事務所所在地として登録でき、普通郵便物だけですが受取も可能です。面接等で利用する際は、有料で事務所所在地の居室を借りることになります。早速、契約し、世田谷区二子玉川を事務所所在地にしました。

開業準備とご挨拶

 病院退職後にハローワークで失業手続きをしていましたが、個人開業に踏み切ったことで、再就職手当の申請へ切り替えました。結局、ハローワークへは最初の手続きと、再就職手当申請の2回しか行きませんでした。再就職手当申請では、すでにリーフレット案を携えていたので差し出すと、1年後も事業継続の見込みがあると判断され、申請が受理されました。ハローワークを後にすると、その足で所管の事務所へ出向き、青色申告の開業届を提出しました。以降、事業所用口座開設や、オンライン会計契約、ウェブサイトの構想練りとウェブサイト作成会社への依頼、リーフレット・名刺等の作成等にとりかかり、お世話になった方々へ退職と開業のご挨拶をさせていただきました。

事業の走り出し

 開業手続きに追われながら、様々な研修会の講師や話題提供などに対応させていただきました。都内三弁護士会の虐待勉強会、東京都行政書士会の後見・精神障害の研修会、日本精神保健福祉士協会北海道大会の意思決定支援シンポジウム(プレ企画)、武蔵野大学や早稲田大学人間科学学術院の講義等。開業前から関わらせていただいている、日本精神保健福祉士協会認定成年後見人ネットワーク「クローバー」運営委員会や、世田谷区障害支援区分認定審査会などの活動もありました。

7月からの全面開業

 7月20日の本格開業以降は、精神保健福祉士のスーパービジョンや、長野県の地域包括支援センターのアドバイザーなども対応させていただきました。成年後見関係では、新たにお二人を受任し、さらにお一人受任調整中で、合計4人の受任を予定しています。今後も受任依頼があれば、無理のない範囲で、少しずつ受任させていただこうと考えています。

 12月に発刊された「実践成年後見 96号」は、「統合失調症の人と成年後見」の特集号で、「精神科医療と成年後見人等の連携と留意点」を投稿させていただきました。

 講師依頼は、成年後見制度利用促進の中核機関である社会福祉協議会からの依頼が多く、精神障害の理解・権利擁護・日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)などのテーマで依頼されます。東京都社会福祉協議会フォローアップ研修や、埼玉県社会福祉協議会生活支援員・法人後見支援員研修などに対応させていただきました。いずれも出向いての動画撮影で、いつまでたっても撮影に慣れない自分に閉口しました。

 その他、世田谷区基幹障害者相談支援センターの新規事業として、相談支援専門員に対し、相談支援専門員以外のソーシャルワーカーが、アドバイザーとしてスーパービジョンを担う調整も進み、2022年1月から実施することになりました。

 事業の柱の一つにしていた個人契約のかかりつけ相談・ホームソーシャルワークやファミリーソーシャルワークは、当方の力不足か、ニーズがないのか、費用の問題か、周知されていないのかわかりませんが、利用はわずかでした。ゆっくりと取り組んでいきたいと考えています。

社会的活動

 日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会の活動、聴覚サポート「なかま」の委員会に参加させていただく機会を得ました。聴覚障害といっても、先天性・中途障害の違いや、社会経験の差異、獲得したコミュニケーションスキルの違い、重複障害の有無など、個々により大きく違います。総じて言えるのは、社会の側に聴覚障害に対するコミュニケーションスキルの未熟さがあるということです。当方もまた未熟な者の一人ですが、改めて包摂というキーワードから、すべての人がとり残されない社会とはどうあるべきか、考える機会となりました。

 在住の狛江市の諸活動にも参加させていただいており、狛江市社会福祉協議会あんしん狛江運営委員や、狛江市権利擁護小委員会委員兼狛江市権利擁護支援地域連携ネットワーク協議会委員などでも学ばせていただいております。

 病院退職後から年末まで、あっという間に過ぎてしまいました。幅広く仕事ができればと考えていたので、皆さまから様々な活動機会をいただき感謝に堪えません。改めて御礼申し上げます。

 コロナ禍で普及したオンライン会議やオンライン研修会・講義等の影響は、当事務所も受けています。移動時間がなく手軽なコミュニケーション手段とし大いに活用している一方、息遣いや間など肌感覚の非言語コミュニケーションの限界も感じているところです。事務所の有料会議室を使う機会はなく、在宅でのオンラインか、先方へ出向く対応ですべての仕事が回っています。今後もオンライン技術が発展し、さらにコミュニケーションツールが進化していくのでしょう。スターウォーズに登場するような3Dディスプレイ(虚空に浮かぶ立体動画)も開発が進んでいると聞きます。楽しみでもあり、少し立ち止まりたい気持ちあるという心持ちです。活動報告がなかなかできなかったので、まずは、開業した2021年の報告をさせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人

長谷川千種

昭和大学附属烏山病院の精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)として30年メンタルヘルス領域のソーシャルワーク実践に携わりました。退院支援、受療支援、地域関係機関との連携の他、成年後見制度や日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)等、多くの経験をさせていただきました。個人事務所で新たな歩みを始めたいと考えています。